2017年12月21日

第39回:鼻行類(ハラルト・シュテュンプケ 平凡社ライブラリー1999)

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 それなりにいろいろな本と出会ってきた。

 面白い本。面白くない本。感動する本。しない本。ためになる本。ならない本。後悔する本。しない本。子供向け本。アダルト本。そしてこの「鼻行類」
 どう形容したらよいやら……「今まで出会った中で一番ヘンな本」である。

 「鼻行類」という鼻で歩く哺乳動物の大真面目な研究書なのだが、一見して怪しいイラスト満載で「こんな生き物おらんやろ!」と誰もが突っ込むこと請け合いである。

 小説の中で架空の生物をつくり上げて、それらしく書くことは普通に行われる。
 だがこの本は体裁だけは完璧なまでに動物学の研究書の形をとっているので、戸惑う。

 一応「嘘だ、嘘だ、作者の空想の産物だ」と思いながら読み進めていくのだが、全て読み終えてもどこにも嘘の証拠を見つけられない。

 鼻行類は既にあるアクシデントによって棲息していた島ごと消滅してしまって、現在地球上に存在しない。実在を証明できないのは確かだが、実在しなかったとも言い切れない。しかも本書はご丁寧にも最後に参考文献まで掲げられており、完全な研究書の体裁を貫き通して終わる。(その参考文献も全て島の消滅とともに一切失われたらしい。)

 バカバカしいと思いながらも、絶対にいなかったとも言い切れない、この宙ぶらりん感。
 かつてない未消化の不快
 鼻行類がいたかどうかは完全に読者に委ねられる。

 実在しなかったと言い切る拠りどころは「私がこの本を嘘だと思うから」という自己の信念によるしかない。

 こんなヘンな本は見たことがない。
 しかし読んだ人間が何かしら試される本ではある。




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ラベル:鼻行類
posted by ガウス at 22:14| Comment(0) | 文系紙本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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