2018年05月09日

第43回:山県有朋の「奇兵隊戦記」(一坂太郎・洋泉社2013)

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 一般的に幕末長州においてその知名度と人気で言うなら吉田松陰高杉晋作が筆頭だろう。
 続く三番手に木戸孝允伊藤博文あたりが出てくるだろうか、いや人気でいけば久坂玄瑞が食い込む可能性もある。
 そしてようやっとその次ぐらいに山県有朋井上馨かといったところだろう。

 山県は人気がない。
 劇的にない。

 帝国陸軍へと続く道筋をつけた人物として軍隊がついてまわるので、無意識にダークなイメージが付加されてしまう。
 ただ、明治、大正と日本が西欧列強に食いつぶされなかったのは、この人のおかげである。

 歴史にはその時その時に必要とされる人物が生まれ、仕事をするという性質がある。たとえそれが鬼子であったとしても。

 実は軍隊に良いも悪いもない。それが生まれる背景があり、生まれて仕事をしたというだけの話である。それが仮によからぬ結果をもたらしたとしたら、それは使い方の問題であり、問題から我々は学び直す必要があるということである。軍隊を絶対悪と見て、思考停止に陥ることの方が問題だと考える。


 本書は題名の通り、山県有朋が奇兵隊とともに戦った幕末維新の戦争の記録である。山県本人の二冊の回顧録を読み解きながらその時代を描いていく。後半の戊辰戦争のあたりが一番山県の思い入れも強そうで、読みどころである。長州人でありながら西郷隆盛を敬愛したという山県の姿も端々に見えて面白い。

 吉田松陰→高杉晋作→木戸孝允→山県有朋→伊藤博文、これらの人物評伝を一冊ずつ読めば、長州幕末維新史は一通り網羅できるだろう。同じエピソードを重層的に眺めることもできるから、一冊読むより絶対楽しめる。




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posted by ガウス at 10:54| Comment(0) | 文系紙本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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